かつてダイエットの代名詞は「運動」でしたが、2010年代以降は「食事制限(食事コントロール)」が減量の主流な方法として世に知られるようになりました。食事制限とは文字通り、ふだんの食事量を減らすことで「カロリー制限」をし、脂肪の蓄積を抑えたり減らしたりする方法のことです。ところが、食事制限が世間ですっかり定着するようになると、次第に誤った認識と理解にもとづく方法が行われるようになり、ダイエットの失敗や体調不良、果ては「かえって太りやすくなってしまった」なんていう悲劇に見舞われるダイエッターが続出することになるのです。
有名になればなるほど、“正しい知識”よりも“口コミ”の影響力が増していき、その結果、物事に対する理解度が浅くなるのは、世の常なのかもしれません。そこで今回は基本に立ち返るという意味で、「カロリー制限ダイエット」を取り上げていきたいと思います。「カロリー制限ダイエット? そんなのとっくに知っているよ!」と自信を持っている方にも、ぜひ復習の意味で読んでもらいたいです。それではさっそくみていきましょう!
そもそもカロリーって?
「カロリーは、体が脳や内臓を動かしたり、運動したりするのに必要なエネルギーの呼び方です。(中略)私たちは食べ物の炭水化物(糖分)や脂質(脂肪)、たんぱく質からカロリーをとります。食べ物からとるカロリーと、体が使うカロリーのバランスがよくないと、太りすぎ、やせすぎ、生活習慣病などの原因になったりします。」
(引用:食品安全委員会「カロリーって、いったいなんだろう?」
人間は身体を動かすことはもちろん、生命の維持活動や物事を考えたりする際にもエネルギーを必要とします。この食物から摂取するエネルギーのことをカロリーと言うのです。
制限して得られる効果:痩せる
当たり前といえば当たり前ですが、カロリー制限ダイエットは食べる量を減らしてカロリーを制限することを目的とするわけですから、このメソッドを継続していくと一ヵ月程度でみるみる効果があらわれてきます。
ダイエットと言えば運動を思い浮かべる方も多いと思いますが、この運動で消費できるカロリーは想像以上に少ないのです。
例えば、お茶碗1杯分のごはんを食べたカロリーを消費するには、1時間以上ジョギングしなければならないのです。
ダイエットは、摂取カロリー < 消費カロリー の関係が成り立つことで成功に近づきます。
人間は生きていく上でエネルギーを摂取しなければなりませんが、外部(食事)から摂るエネルギーが足りない場合は、体内の脂肪からエネルギーを獲得するようになります。
そうすることでダイエットで減らすべき脂肪がどんどん燃焼していくことになり、これがダイエット効果をもたらすのです。
効果的なやり方は?
カロリー制限ダイエットのポイントは摂取カロリーを抑えるところにあります。
でも、摂取するカロリーを少なくしたいからといって1日中何も食べないのは身体にも悪いですし、かえって食欲を抑えられなくなってダイエットに失敗してしまうこともあるので、注意が必要です。
昼間は効果が薄い
「朝食,昼食,夕食の1日3食が食事の基本である.夜食は,規則正しい食生活から逸脱した就寝前の時間帯に十分な食事を摂取することである.仕事や活動時のエネルギー源となるヒラメ筋グリコーゲンは摂食前の空腹時に低く,摂食によって増加し,その後減少する日内リズムが認められた.しかし,1日摂食量の1/3を遅い時刻に摂食させた場合,摂食によるヒラメ筋グリコーゲンの増加は認められなかった.」
引用:「時間栄養学と健康」
日中の活動のエネルギー源となるグリコーゲンは、ヒラメ筋と呼ばれる筋肉に貯蔵されています。これが空腹時に少なくなり、摂食と同時に増え、また少しずつ減少していくというサイクルをたどります。
活動が活発な時間帯である昼間に必要となるエネルギーはその時間帯の食事から得るので、朝食や昼食時のカロリーが脂肪として蓄積される可能性は低いのです。摂った食事をすぐにエネルギーに変換・消費する昼間の時間帯にわざわざ食事制限をしても、得られる効果はそれほど期待出来なさそうです。
では、どのタイミングで摂取カロリーを抑えると良いのでしょうか?
夜に実践
なんといっても、夜はわたしたちの身体の活動が鈍くなる時間帯ですので、夕食で摂取したカロリーや糖質がエネルギーとして変換されにくくなり、余剰分が脂肪の蓄積へと回りやすくなります。
なので、この夕食のタイミングでカロリー制限ダイエットを実践すれば、存分にダイエット効果を引き出すことができ、太るリスクを軽減できるようになるのです。
また、人間の体には肥満遺伝子ともいわれる「BMAL1(ビーマルワン)」というタンパク質があり、この成分が多く分泌される時間がもっとも太りやすく、その時間帯はだいたい22時くらいだと言われています。
「夜食が太る」と言われるゆえんは、このBMAL1に根拠があるのです。
BMAL1が分泌される夜は、摂取した栄養の一部が脂肪に代わってしまう可能性が高まってしまいます。だからこそ、カロリー制限ダイエットのベストタイミングは、夜という結論に至るのです。
注意点は?
リバウンドに注意!
カロリー制限をすることでダイエットに成功したとしても、「リバウンド」という副作用が起こる危険性は少なくありません。
ダイエット中は身体の活動に必要なエネルギーを身体に溜まった脂肪を分解することで調達します。余分な脂肪を減らすことがダイエットの目的なので、このこと自体は何も問題がありません。
ただ、体内の脂肪からエネルギーを調達するさまは、身体にとっては”飢え”を意味します。生活に例えると貯金を取り崩している感じですね?
これがダイエットに成功したことに気をよくして以前の食生活に戻すと、摂取した糖質を”飢え”に備えて”非常食(脂肪)”としてより多くため込むようになるのです。
貯金が減ると、節約してまた貯めたくなりますよね?これがリバウンドする原因です。
痩せにくくなる
カロリー制限中は食事の”絶対量”が減ってしまうので、ダイエットをする上では積極的に摂るべき栄養素も減らしてしまう可能性があります。
ダイエット中に摂るべき栄養素、それはタンパク質です。タンパク質は筋肉の材料ともいうべき成分ですが、これが減ってしまうと筋肉量を維持することが出来なくなります。
「多少筋肉量が減ったって、困ることはないのでは?」と女性の方なら思うかもしれませんが、それは大きな間違いです。
人間の生命維持に必要となるエネルギーを基礎代謝と言いますが、この基礎代謝の量は筋肉の量に比例するのです。基礎代謝は何もしなくてもエネルギーを消費してくれるありがたいものです。
もし筋肉量が落ちてしまうと、その分基礎代謝も減少します。となると、1日で燃焼する脂肪の量も減少してしまいます。結果的に「痩せにくく」なってしまうのです。
この点を踏まえて、肉や卵、大豆製品など、タンパク質を多く含む食品は意識して摂るように心がけましょう。
停滞期が長い?
順調に進んでいたカロリー制限ダイエットも、ある日突然効果を上げることがなくなることもあります。これがいわゆる”停滞期”と呼ばれるものです。
「食事制限をすると、体が飢餓状態になる。そうなると、体は次にいつ食べ物が入ってくるか分からないと思い、脂肪を溜め込もうとする。つまり食べていないにも関わらず、脂肪が燃焼されなくなる。そして飢餓状態になってしまうと、いくら食事制限や有酸素運動をしても、停滞期に入り体重が減少していかなくなる。」
引用:阪南大学「ダイエットと摂食障害について」
人間には極端な変化を受け付けない防衛本能のようなものがあります。それがホメオスタシスと呼ばれるものです。
「また,特に減量中はホメオスタシスの働きを顕著に見ることが出来る.例えば食事や運動介入によるエネルギーから見積もった体重減少量に,ほとんどの場合はたどり着かない.これは,食事や運動介入により作られようとしている,もしくは作られた負のエネルギーバランスを相殺しようと,エネルギー摂取量(つまり食欲)の増加やエネルギー消費量の低下をもたらすホメオスタシスの働きによる.」
停滞期の原因もこのホメオスタシスが原因と言えます。停滞期は1カ月近く続くことがありますが、これは体重が減った状態を”一定の状態(通常の身体)”であると認識するための準備期間なのかもしれません。
停滞期に入ったからと言ってそこでダイエットを止めてしまっては元も子もありません。リバウンドしてしまうのが目に見えています。
停滞期に入っても決してあきらめずに、身体が停滞期で止まった体重を、身体が新しい”正常な状態”と思うまで粘ってみましょう。その状態が続くと、またダイエットを始めたばかりの時のように効果が現れるはずです。
もちろん、停滞期の体重が自分にとってベストの体重であるかもしれません。BMIなどの指標を参考に、適正な体重を意識することも忘れないでくださいね。
BMIと適性体重の求め方は
- BMI:体重÷身長(m)÷身長(m)
- 適性体重:身長(m)×身長(m)×22
です。BMIは、18.5~25未満が普通体重です。
カロリー制限ダイエットは、摂取カロリーが消費カロリーを下回れば面白いように痩せていくダイエット法です。でも、冒頭でも触れたように、カロリーは人間の生命維持、毎日の活動のエネルギーとしてなくてはならいものであることは間違いありません。
カロリー制限ダイエットのやり方は?【停滞期は覚悟?】のまとめ
極端な制限で日々の生命維持活動に支障が出て体調を崩すようなことがあってはいけません。結果が早く出る分”副作用”も大きいということを充分に理解したうえで挑戦するようにしましょう!