甘酒は日本人のソウルドリンク?「飲む点滴」の歴史と栄養素

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とろっとしたコクがあって、ほんのり甘い甘酒。子どもの頃に「酒」という言葉にドキドキしながら、熱い甘酒をフーフー冷ましながら飲んだ、そんな記憶がよみがえります。初詣などで、振る舞われた甘酒で暖を取ったことのある方も多いのではないでしょうか?

皆さんの心の中に温かい思い出として残る甘酒も、近年健康や美容によいと注目を集めるようになってきています。そんな皆さんにおなじみの甘酒について、その歴史や健康によいと言われる理由・栄養素について調べてみました。

目次

そもそも甘酒とは?

広辞苑で「甘酒」を引くと

米の飯と米麹(こうじ)とを混ぜて醸(かも)した甘い飲料。古くは、夏の飲み物であった。ひとよざけ。こさけ。醴酒(れいしゅ)。また、酒粕を溶かし甘味をつけた飲料。

とあります。

甘酒にはその作り方で2種類あるんですね。私のイメージする甘酒は酒粕を溶いてつくる方ですが、皆さんはいかがでしょうか?

また、「古くは夏の飲み物であった」とのこと、意外な歴史が隠されていそうです。

甘酒の種類

広辞苑でもお分かりのように、甘酒は原料によって2つの種類に分けられます。

米と米麹

50℃から60℃に保温したお粥に米麹を混ぜて一晩置くだけで、甘酒が出来上がります。

甘酒は「ひとよざけ」と呼ばれることもありますが、これはこの作り方に由来しているんですね。

温度調整が難しそうですが、自動で温度調整してくれる甘酒メーカーも販売されています。

プラス糀 甘酒メーカー糀美人

https://www.marukome.co.jp/product/detail/koji_045/

甘酒の独特の甘みは、米麹に含まれる酵素(アミラーゼ)によって、お粥のデンプンが糖化されることによって生まれます。

アミラーゼ?糖化?聞きなれない言葉が出てきましたが、ご飯をモグモグ噛んでいるとほんのりと甘みを感じませんか?

これも甘酒ができる原理と同じなのです。

噛んでいるうちにご飯が甘くなるのは、唾液に含まれる酵素(アミラーゼ)によって、ご飯のデンプンの糖化が起こるからなのです。

そう考えると、私たちは毎日のように甘酒を食べている(?)と言えそうです。

ちなみに、この唾液(アミラーゼ)の働きを活用して作られるお酒「口噛み酒」は、2016年に大ヒットした映画「君の名は。」にも出てきました。

印象的なシーンだったので、覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

酒粕

米に米麹、酵母を混ぜ、米麹のアミラーゼによるデンプンの糖化によって生じた糖質を、酵母がエネルギーとして「アルコール」と「炭酸ガス」に分解することによって「もろみ」が出来上がります。

よく、蔵元の仕込み桶からぷくぷく泡が出ているのを映像で見ることがありますが、あの泡はこの際に発生する炭酸ガスなのです。

その「もろみ」を、清酒を醸造する際の「圧搾」と呼ばれる行程で搾った後の「搾りかす」が酒粕です。

この酒粕をお湯で溶かして、砂糖などで甘みを調整して作る飲み物も甘酒と呼ばれます。

時間をおかずにすぐに飲めるのはありがたいです。

ただ、この製法で作る甘酒を載せていない辞書もあるので、甘酒としては非主流派かもしれないですね。

甘酒の歴史

甘酒には①米・米麹を原料にするもの、②酒粕を原料にするものの2種類ありますが、どちらも「米」が欠かせません。

日本人の主食はお米、そして、太古の時代から脈々と続く稲作文化があります。

そう考えると、甘酒の起源は大昔までさかのぼれるかもしれません。

日本の歴史書「日本書紀」

神話の時代からの日本の歴史を綴った書物に「古事記」と「日本書記」があります。

その日本書紀には木花咲耶姫(このはなのさくやひめ)(神吾田鹿葦津姫(かむあたかあしつひめ))が天甜酒(あまのたむざけ)を「醸しみて嘗す」との描写があります。

「甜」という文字、そう、砂糖の原料「甜菜」(サトウダイコン)の「甜」です。

この文字が使われていることからも、天甜酒には甘みがあったことがうかがえます。

そう考えると、この天甜酒は米・米麹で作る甘酒のイメージに近いかもしれません。

ちなみに、この木花咲耶姫は宮崎県西都市にある都萬神社(つまじんじゃ)の祭神として祀られていますが、この神社には”日本酒発祥の地”の碑が境内にあるんですよ!

都萬神社

https://tsumajinja.webnode.jp/

万葉集

万葉集にある山上憶良「貧窮問答歌」の一節をご紹介します。

風雑り 雨降る夜の 雨雑り雪降る夜は 術もなく 寒くしあれば 堅塩を 取りつづしろひ 糟湯酒 うち啜ろひて 咳かひ 鼻びしびしに

この「糟湯酒」は文字通り、酒のカス(糟)をお湯で溶かしたものです。

酒粕を使って作る甘酒のルーツと言えそうです。

興味深いのは「堅塩」の言葉です。

生粋の酒飲みは塩をつまみに飲むと言いますが、この飲み方も古く奈良時代からあったんですね!

養老律令と延喜式

奈良時代には中国の政治を倣って律令制度が導入されます。大宝律令を歴史の授業で習った記憶がある方もいらっしゃるかもしれません。

この大宝律令を受け継いだ「養老律令」で造酒司(みきのつかさ・さけのつかさ)という役所が設けられました。

造酒司は文字通りお酒造りを司る役所で、他にも酢の醸造などにも携わっていたのです。

そして、養老律令の施行令ともいうべき延喜式には酒造りの方法がこと細かに記載されいて、その中には醴(こさけ)の作り方も載っていました。

「こさけ」は広辞苑にも載っていましたね。

こさけの原料は米・麹・酒で、「甘い酒」「一夜で出来る」とも書かれています。

原料もほぼ同じで、味覚といい出来上がる時間といい、現在の甘酒に共通する点がありますね。

江戸時代

江戸時代の庶民の暮らしぶりがわかる書物に、守貞謾稿(もりさだまんこう)があります。

守貞謾稿は江戸・京都・大坂の暮らしぶりについて書かれているのですが、この中に「醴賣り(甘酒売り)」の記述があるのです。

これによると、もともとは冬の寒い時期に売られていたものが、いつしか夏に、そして年中飲まれるようになったという移り変わりが書かれています。

守貞謾稿 ~国立国会図書館デジタルコレクション~

http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1444386/104

甘酒の季語は意外にも「夏」ですが、なぜ、俳句の季語になるほど夏に好んで飲まれるようになったのでしょうか?

飲む点滴?甘酒の栄養成分

寒い冬の夜に暖を取る、そのような甘酒が夏に好んで飲まれるようになったのはなぜなのでしょう?

それは、甘酒が夏バテ予防、暑気払いによいと庶民の間に広まったからなのです。

それでは、米と米麹で作る甘酒と酒粕の栄養成分を見てみましょう。

米麹甘酒 酒粕
成分名 単位
廃棄率 % 0 0
エネルギー kcal 81 227
kJ 339 950
水分 g 79.7 51.1
たんぱく質 g 1.7 14.9
アミノ酸組成によるたんぱく質 g (14.2)
脂質 g 0.1 1.5
トリアシルグリセロール当量 g
炭水化物 g 18.3 23.8
灰分 g 0.2 0.5
無機質 ナトリウム mg 60 5
カリウム mg 14 28
カルシウム mg 3 8
マグネシウム mg 5 9
リン mg 21 8
mg 0.1 0.8
亜鉛 mg 0.3 2.3
mg 0.05 0.39
マンガン mg 0.17
ヨウ素 μg
セレン μg
クロム μg
モリブデン μg
ビタミン A レチノール μg 0 0
カロテン α μg
β μg
β−クリプトキサンチン μg
β−カロテン当量 μg 0 0
レチノール活性当量 μg 0 0
D μg 0 0
E トコフェロール α mg Tr 0
β mg 0 0
γ mg 0 0
δ mg 0 0
K μg 0 0
B1 mg 0.01 0.03
B2 mg 0.03 0.26
ナイアシン mg 0.2 2.0
ナイアシン当量 mg 0.50 (5.30)
B6 mg 0.02 0.94
B12 μg 0
葉酸 μg 8 170
パントテン酸 mg 0 0.48
ビオチン μg
C mg 0 0
脂肪酸 飽和 g
一価不飽和 g
多価不飽和 g
コレステロール mg 0 0
単糖当量 g
食物繊維 水溶性 g 0.1 0
不溶性 g 0.3 5.2
総量 g 0.4 5.2
食塩相当量 g 0.2 0.0
アルコール g 8.2
重量変化率 %

参照 文部科学省 食品成分データベース

https://fooddb.mext.go.jp/

それぞれ、ビタミンB郡や葉酸、ミネラルなど幅広く含まれているのがわかります。

酒粕には食物繊維が多く含まれ、またカロリーも高めです。

なるほど、江戸時代に夏の季語になるほど親しまれるようになった理由はその栄養成分にあったようです。

この甘酒の効能を江戸時代の人は知っていたんですね。

飲む点滴って本当?

ところで、甘酒のことを「飲む点滴」ということがありますが、果たしてどうなのでしょう?

比較結果を明らかにした資料が見当たらないので、独自に検証してみました。

点滴にもいろんな種類にもありますが、テルモのフルカリック1号輸液の組成と比較してみます。

この輸液は大室・中室・小室とを投与時に混合するキットタイプですが、混合後の成分は以下のようになります。

成分\容量 フルカリック1号輸液 米麹甘酒 酒粕
903mL中 g換算 100ml(≒100g)当たり 100g当り 100g当り
ブドウ糖 120g 13.33g 18.3g 23.8g
糖濃度 13.29%
電解質 Na ナトリウム 50mEq 1150mg 127.78mg 60mg 5mg
K カリウム 30mEq 1173mg 130.33mg 14mg 28mg
Mg2+ マグネシウム 10mEq 120mg 13.33mg 5mg 9mg
Ca2+ カルシウム 8.5mEq 170mg 18.89mg 3mg 8mg
Cl クロール(塩素) 49mEq 1739.5mg 193.28mg
Acetate 酢酸塩 11.9mEq
L-Lactate ラクテート 30mEq
Gluconate グルコン酸 8.5mEq
P リン 250mg 250mg 27.78mg 21mg 8mg
Zn 亜鉛 20μmol 1.308mg 0.15mg 0.3mg 2.3mg
ビタミン チアミン塩化物塩酸塩 ビタミンB1 1.5mg 0.17mg 0.01mg 0.03mg
リボフラビンリン酸エステルナトリウム ビタミンB2 2.54mg 0.28mg 0.03mg 0.26mg
ピリドキシン塩酸塩 ビタミンB6 2mg 0.22mg 0.02mg 0.94mg
シアノコバラミン ビタミンB12 5μg 0.56㎍
ニコチン酸アミド ナイアシン 20mg 2.22mg 0.02mg 0.94mg
パンテノール パンテトン酸(ビタミンB5) 7.02mg 0.78mg 0 0.48mg
葉酸 0.2mg 0.02mg 8㎍ 170㎍
ビオチン ビタミンB7 0.05mg 0.01mg
アスコルビン酸 ビタミンC 50mg 5.56mg
レチノールパルミチン酸エステル ビタミンA 1650IU 0.54mg 0.06mg
エルゴカルシフェロール ビタミンD 5μg 0.56㎍
トコフェロール酢酸エステル ビタミンE 7.5mg 0.83mg
フィトナジオン ビタミンK1 1mg 0.11mg
アミノ酸 総遊離アミノ酸 20g 2.22g
総窒素 3.12g 0.35g
必須アミノ酸/非必須アミノ酸 1.33
分岐鎖アミノ酸/総遊離アミノ酸 31.0w/w%
総熱量 560kcal 81kcal 227kcal
非蛋白熱量 480kcal
非蛋白熱量/窒素 154

医療用医薬品:フルカリック 1号輸液(903ml)より抜粋・加筆

https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med_product?id=00061130-004#00061130-001

栄養成分表と輸液の組成表、単純に比較するのは難しいですが、該当する成分を並べてみると、確かに似たような感じになりますね?

甘酒を飲む点滴と表現するのは決して誇張ではない、そういうことができそうです。

栄養成分に恵まれた甘酒を飲まずにおくのはもったいないですね。

甘酒を広げるとりくみ

日本古来の健康・栄養ドリンクの甘酒をもっと広めよう!と知恵を絞っているメーカーもあります。

森永や月桂冠などのメーカーは、米麹と酒粕のそれぞれの良いところを合わせた甘酒を作ってます。

森永製菓株式会社の甘酒

https://www.morinaga.co.jp/amazake/

月桂冠株式会社の甘酒

http://www.gekkeikan.co.jp/products/type13/amazake/

また、フルーツ甘酒を作り出した中埜酒造など、これからもどんどん甘酒の注目度は上がっていきそうです。

中埜酒造株式会社の甘酒

https://www.nakanoshuzou.jp/amazake/

さらに、酒粕自体を上手に料理に取りいれてもらおうと、酒粕を使ったレシピを紹介するサイトも数多くあります。

日本酒をもっと知りたくなるWEBメディア

https://jp.sake-times.com/?s=%E9%85%92%E7%B2%95&pg=2#readmore

変わり種は、酒粕を使ったアイスクリームでしょうか?

スイーツに変化するなんて意表を突かれました。

他にも工夫次第でいろんなアレンジが楽しめる、酒粕はそんな可能性を秘めた食材なんですね。

甘酒を使ったダイエット方法はこちら

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甘酒のことは当然知っているけれど、その“正体”をよくわかっていない人はけっして少なくありません。そこで本記事では、そんな甘酒の歴史を紐解きながら、じつは「飲む点滴」と称せられるほどの栄養価を有していることを説明していきます。

「飲む点滴」というのは、けっして誇張ではないようです。実際の点滴液と比較しても、その構成成分がかなり似ているという驚きの事実も判明!

いまでは「冬の飲み物」といったイメージが定着していますが、江戸時代などでは、もともと「夏バテ予防」として冷やして飲まれていたといいます。興味深いですよね?

記事の作成にあたっては、記事中に触れたサイトの他に、以下のサイトを参考にいたしました。

月桂冠総合研究所

http://www.gekkeikan.co.jp/RD/keyword/amazake/

あまざけ.com

http://xn--l8j4ao3n.com/

宝酒造株式会社

https://www.takarashuzo.co.jp/products/seasoning/index.htm

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