みなさんは、「酵素玄米」をご存じでしょうか? 「酵素」と「玄米」はそれぞれ聞き慣れた言葉かもしれませんが、これらを合わせた「酵素玄米」はあまりピンとこないかもしれません。でも、この酵素玄米がダイエットに効果があるとのことで人気が出ているのです。そこで今回は「酵素玄米ダイエット」についてご紹介します。
酵素玄米、なんだか専門的な用語のようにも思われますが、じつは作り方は非常にシンプルで、「小豆」と「塩」と「玄米」を混ぜて炊いた食べ物のことなのです。昨今では酵素玄米の作り方がクックパッドでも公開されており、誰でも簡単に作ることができます。はたして、この酵素玄米のダイエット効果とは?さっそくみていきましょう!
そもそも酵素玄米とは?
酵素玄米は玄米と小豆に少量の塩を一緒に加えて炊き、3日程置いてから食べるご飯のことを言います。
通常であれば炊きたてを食べるのですが、この酵素玄米は数日間置くことによって酵素を含ませるのです。
これが酵素玄米の一番のポイントになります。
3日ほど置くことから、酵素玄米は寝かせ玄米とも呼ばれることもあります。
酵素玄米ダイエットのやり方は?
酵素玄米ダイエットのやり方はとても簡単です。普段食べている白米を酵素玄米に置き換えて食べるだけです。置き換えるのは主食の白米だけ、他のおかずはいつも通り食べるようにします。
食べる量も変えずにそのまま好きな量を食べても大丈夫です。ただし、白米に比べてカロリーや糖質が抑えられているからといって、いつも以上に食べ過ぎてしまっては元も子もありません。
酵素玄米を過信するあまり、おかずを食べすぎることのないよう気を付けましょう!
酵素玄米ダイエットの効果とその成分とは?
玄米
豊富な栄養素が含まれることで知られる玄米、明治から大正にかけて猛威を振るった「脚気」の特効成分(ビタミンB1)が発見されるきっかけとなったことをご存知の方もいるかもしれません。
酵素玄米ダイエットを実践するさいには、当然ですが、この玄米を食べることになりますので、この食材のダイエット効果の恩恵にあずかることができます。さっそく、玄米の成分とそのダイエット効果を見てみましょう。
ビタミンB1、B2が糖と脂肪の代謝を助ける
玄米にはビタミンB1、B2が豊富に含まれています。玄米と言えばビタミンB1を思い浮かべる方も多いかもしれません。このビタミンB1を発見したのは日本人(鈴木梅太郎)なのです!
このビタミンB1は糖質の代謝に関わりエネルギーの産生を助ける働きがあります。糖質の摂取が多い人や日頃身体をよく動かす人に欠かせない成分です。
また、ビタミンB2も糖質の代謝を始め、タンパク質と脂質の代謝に関与してエネルギーの産生を助ける働きがあります。
糖や脂肪の分解をサポートする働きは、ダイエットになくてはならないですね!
GABAの抗ストレス効果と血圧低下効果
健康効果が期待できる最近注目の成分GABA、玄米にはこのGABAが豊富に含まれています。
GABAは交感神経に働きかけ、
- 血圧を下げる
- 気分を落ち着かせる
- ストレスを軽減させる
といった効果があることが明らかになっています。
ダイエットは食生活の変化など、我慢を強いられる場面が多々あります。その際はどうしてもストレスや欲求不満がたまってしまいますよね?
GABAの「気分を落ち着かせる」「ストレスを軽減させる」という効果は、ダイエットを陰で支えてくれるのです。
また、GABAには血圧を下げる働きがあります。この作用は高血圧の被験者にのみ認められ、正常値にある被験者の血圧には見られなかったそうです。
肥満体の人は血圧が高くなる傾向がありますが、このGABAを摂取することで血圧の低下が期待できるのです。ダイエットとは直接結びつく働きではありませんが、血圧を下げる作用は健康的な毎日を送る上で大切なものなのです。
γ-オリザノールの体重減少効果
γ(ガンマ)-オリザノールは、ほぼ米ぬかの中にのみ存在すると言っても過言ではない健康成分です。
γ -オリザノールは分泌タンパクの折り畳みを促進する分子シャペロンとして機能し、慢性的な動物脂肪の過剰摂取によって視床下部で亢進する ER ストレスを低下させ、動物脂肪に対する依存性を軽減し、糖脂質代謝異常やインスリン抵抗性を改善することをマウス実験で明らかにした 。
(中略)
沖縄県在住の壮年期男性メタボリックシンドローム患者を対象に実施したパイロット臨床研究(玄米食の内臓肥満および糖脂質代謝に及ぼす影響:BRAVO 研究)(琉球大学医学部第二内科・豊見城中央病院)によって、主食の白米だけを等カロリーの玄米に8週間置換するだけで明らかな体重減少効果、食後の高血糖・高インスリン血症の改善効果、脂肪肝改善効果、内皮依存性血管拡張反応の改善効果、ジャンクフード・ファストフードに対する嗜好性の緩和効果が確認された。
引用した論文は、健康長寿県で知られる沖縄県の高齢者が玄米を好んで食べていた事実に着目し、米ぬかに含まれるγ‐オリザノールの効能を明らかにした論文です。
γ-オリザノールには食後の高血糖を改善する効果や脂肪肝改善効果など、ダイエット効果を期待できる働きがあることがわかりましたが、何よりも目を引くのが「明らかな体重減少効果」の文字ですよね?
研究対象者が「壮年の男性メタボ患者」に限定されているとはいえ、人間を対象にした研究でこのように明らかな効果が認められたという結果はダイエットの力強い味方になってくれることは間違いありません!
フィチン酸の抗脂肪肝作用
フィチン酸には抗脂肪肝作用があることが研究で明らかにされています。肝臓に脂肪がたまることによって起こる「脂肪肝」はそのまま放置すると肝機能が低下し、肝硬変などの重大な病気の原因になりかねません。
肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれるように、肝機能が低下してもその症状に気付きにくく、体調の変化に気付いたときには症状がかなり悪化しているということがほとんどです。
フィチン酸の肝臓への脂肪の蓄積を防いでくれる働きは、脂肪にダイレクトに働く作用としてダイエットを成功へと導いてくれそうです。
ところで、このフィチン酸ですが、ミネラルの吸収を阻害するという悪影響について触れているサイトも数多くあります。
確かに、参考にした論文においても「一般的に抗栄養因子と位置付けられている」との表現があることから、その側面を否定できません。
しかし、栄養摂取(特にミネラル)の吸収を阻害する悪影響を及ぼすには、抗脂肪肝作用をもたらすフィチン酸量の10倍以上のフィチン酸がなければならないと推定されています。
したがって、一部で指摘されるフィチン酸の悪影響は、玄米ダイエットを実践する上では問題にならないと考えられるのです。
食物繊維による腸内環境改善効果
白米の約8倍の食物繊維を含む玄米は、腸内環境を整える効果が期待できる優れた食べ物です。
腸内環境は、美容・健康・ダイエットの命運を左右する非常に重要な場所です。
腸の具合がカギを握っているわけですから、健康的なダイエットを進めるうえで玄米の食物繊維は重要な役割を果たしてくれるのです。
さらに、食物繊維には
- 血糖値の上昇を抑える
- コレステロールの排出を促進する
と言った働きがあります。
血液中の糖はそのままエネルギー源として使用されますが、余った糖はインスリンによりグリコーゲンとして肝臓や筋肉に蓄えられます。その貯蔵量が上限に達すると、今度は脂肪として蓄積されてしまうのです。
血糖値の上昇を抑えるということは、脂肪の原料となる糖の供給を抑えることに繋がります。このような形でダイエットに役立つのですね。
小豆
「小豆の栄養成分は大豆と異なり,炭水化物量が多いのが特徴であるが,さらに近年では食物繊維,サポニン,ポリフェノールなどの生理的な作用を有する成分が発見され,抗菌性溶血作用,抗炎症作用,脂質代謝改善作用,および抗酸化作用などの機能性が注目されている.特に,ラフィノースファミリーのガラクトオリゴ糖は大豆など豆類に多く含まれ, 腸内のビフィズス菌の増殖促進物質として知られている.また,このことはこれらオリゴ糖を摂取することによりプロバイオティクス効果(有用菌の増加,免疫賦活作用,発ガン物質の吸着・除去,コレステロール低下作用,便秘予防など)を高めることも明らかにされている」
酵素玄米は小豆も一緒に炊くところがポイントです。小豆水ダイエットなどのダイエット法がある小豆、はたしてそのダイエット効果はどのようなものなのでしょう?
サポニンの血流改善・肥満予防効果
サポニンには血流を改善する働きがあります。身体のすみずみまで新鮮な血液が行き渡ることで細胞も活性化、代謝の向上につながることで脂肪の燃焼促進が期待できます。
さらに、サポニンには
- 脂肪の蓄積を抑制する働き
- 脂肪の燃焼を促すアディポネクチンの分泌を促進する働き
があります。蓄積予防と燃焼促進と、攻守にわたって脂肪に働きかける効能はダイエットに欠かせないですね!
参考:公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「サポニンと効果と摂取量」
小豆ポリフェノールの脂肪吸収抑制・排泄効果
高い抗酸化作用で知られるポリフェノールですが、この小豆にもポリフェノールが含まれています。ポリフェノールは自然界に5,000を超える種類があると言われており、抗酸化作用は共通ですが、それぞれに異なった効能があります。
「これらの結果により、長期間、高脂肪食餌と同時にAPP(筆者注:小豆ポリフェノールのこと)飲料を雌マウスに与えると、APPが膵リパーゼを抑制することにより食餌性脂肪の消化・吸収を抑制し、脂肪が糞中に排泄されて、体重増加の抑制が起きていると推定した。」
このように、小豆ポリフェノールには膵リパーゼを抑制する働きがあり、その結果として脂肪の排泄が増えることで体重の増加が抑えられるとのことなのです。
マウスの、しかも雌のマウスを対象とした実験だけに人間に当てはまるかは今後の研究を俟たなくてはなりませんが、大いに期待したいですね!
ビタミンB1、B2と食物繊維
小豆にも玄米に含まれるビタミンB1、B2と食物繊維が含まれています。
それぞれの効能についてはすでに触れましたが、玄米のそれらと合わさることで摂取量も増えますね?
オリゴ糖で腸内環境改善
小豆にはオリゴ糖が含まれていますが、このオリゴ糖は善玉菌のエサとなって腸内環境の改善に貢献してくれます。
「肥満やその原因となる高脂肪低食物繊維の欧米型食生活は,腸の透過性を亢進したり,炎症を誘発しやすい腸内細菌叢組成に変化させることが明らかとなり,糖尿病や動脈硬化症などの炎症性疾患につながることが示唆された.したがって体に有益な 腸内細菌叢組成を養生するためには,プレバイオティクスやプロバイオティクスだけでなく,低脂肪で食物繊維が豊富な食事を摂取することが重要であることが明らか となった.」
これは食物繊維にも共通して言えることですが、腸の状態が健康状態や代謝を左右することが研究でも明らかにされています。
酵素玄米で食物繊維とオリゴ糖を摂取することで、腸内環境の改善が大いに期待できるのです。ダイエットに直接関係する話ではありませんが、健康な体はダイエットを根本から支えてくれるものです。
大切にしていきたいですね!
作り方(炊き方)
さて、肝心の酵素玄米の作り方です。冒頭でも触れましたが、特別に難しい工程があるわけではありません。炊飯器さえあればどなたでも簡単に炊くことができます。
<材料>
- 玄米:3合
- 小豆:30g
- 塩:小さじ1
- 水:600cc
<作り方>
- ボウルに玄米と小豆を入れ、分量外の水を入れてざっと洗い、ゴミやほこりを洗い流す。ゴミやほこりが気にならなくなるまで繰り返します。その後ザルにあけて水を切る。
- 1をボウルに戻し、分量の水と塩を入れる。
- 泡だて器を使い、8分間優しくかき混ぜる。※これが重要なポイントです!
- 3をそのまま炊飯器に入れ、玄米コースで炊く。
- 炊きあがったら、毎日最低1回はかき混ぜる。※保温状態のままです。
- 5を3-4日繰り返して酵素玄米の出来上がりです。
出来上がった酵素玄米は冷凍保存も可能です。1食分づつラップに包んで冷凍しておけば、その後の調理も楽です。
解凍する際はレンジではなく、蒸して解凍しましょう。
酵素玄米ダイエットの注意点は?
一食まるまるの置き換えではない
酵素玄米ダイエットは置き換えダイエットの一種です。
ここを勘違いして、酵素玄米のみを食べて過ごす人がたまにいらっしゃいます。
酵素玄米は白米と比べると栄養価の面で優れていますが、とはいっても必要な栄養素をまんべんなく摂取できるわけではありません。
酵素玄米だけをひたすら食べるのはNGです。野菜や肉、魚なども食べるバランスの良い食事を続けてください。
雑菌の繁殖に注意!
酵素玄米は炊きあがった後でも、3-4日保温状態を維持するところに作り方の特徴があります。
雑菌が繁殖しないように1日に最低1回はかき混ぜるのですが、その際に使うしゃもじが汚れていると、そのしゃもじの雑菌が繁殖しかねません。
酵素玄米に触れる際は、いつも以上に清潔であることを心がけましょう。また、食べきれないと判断した場合は、ためらうことなく冷凍保存してしまいましょう。
食中毒の出やすい夏場は、市販されている個食タイプの酵素玄米を活用するのも賢い方法かもしれません。
無農薬の玄米を選ぶ
普段口にする白米は、精米の過程でもみ殻やヌカが取り除かれるので、残留農薬の心配はそれほどありません。
でも、玄米はもみ殻だけを取り除いた状態なので、農薬が残りやすいと言えるのです。なので、玄米を選ぶ際は無農薬栽培のものを選ぶようにしましょう。
酵素玄米のダイエット効果とやり方!10日間続けた結果はどうなる?のまとめ
ともに単体でもダイエット効果が期待できる玄米と小豆、この2つが合わさるのですからその効果はかなり期待することが出来そうです。また、いつもの白米をこの酵素玄米に置き換えるだけなので、ダイエットにありがちな空腹感との闘いとも無縁ですね!
独特の食感や食味に慣れないうちは大変かもしれませんが、それさえ克服できれば、リバウンドの心配もなく健康的に痩せることが出来そうです。